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雪花の日記です
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「…かわいそうに。」

蔵馬は今日何度目かわからないセリフをため息と共に送り出した。
風邪を引いた恋人を見舞ったのである。
春から一度も休まなかった学校を、
それで初めて病欠してしまったと彼女は嘆いた。
しかし休んで正解だったろうと蔵馬は思う。
夜に八度近い高熱を出して喘いでいたと言うではないか。

「苦しそうだね。だから薬を作るよって…」
「いらな………!!」

言いかけて、彼女はごほごほと咳き込んだ。
先程からほとんど一度すらもまともに話ができていない。
なにか言おうものなら、咳、咳、咳。
なにも言わなくとも、咳、咳、咳。

「かわいそうに」

はぁぁ、とため息をまたついて、
蔵馬はヨシヨシと彼女の頭を撫でてやった。

「子ども扱い…」

単語だけで会話を進めるのが精一杯だ。
彼女はぜいぜいと息を切らすようにしてそう言った。
熱が引いて数日、しかし、まだ咳が止まらない。
抱きしめて背中をさすってやっているが、効力があるとはあまり思えない。
愛情が特効薬という話もよく聞くが、実際咳は止まらない。
もしこれが本当だとしたら、有り余る愛情を受けて
彼女は風邪など引きもしないはずだ。

「はぁ…蔵馬、帰っていいよ…うつっちゃうよ」
「人にうつすと治ると言うでしょ」
「やだぁ」
「まだいるよ。今少し不機嫌なんだ」

彼女はわからんという顔をする。
妖気も表情も不機嫌のかけらすらなく思える蔵馬の気配。

「唐突…」

それだけ言って、彼女はまた苦しそうに咳き込んだ。
抱きしめる胸元でほとんどひっきりなしにごほごほやっている
彼女は確かにかわいそうで仕方ないが。
唐突に不機嫌とは、と彼女は聞きたかったのではないか。

「だって、ねぇ。咳のおかげでキスもできない」

彼女はきょとんと蔵馬を見上げた。
咳のしすぎで涙目になって潤んだ瞳が見上げてくる。
一瞬おいて、彼女はころりと微笑んだ。
今のうち、と誘われた気がして、やっと触れるだけのキスを贈る。
ほんの少し甘い空気が流れた気がしたのも束の間、
彼女はまた盛大にごほごほと咳き込んでしまう。
おかげで蔵馬はまた少し不機嫌を覚えるのだ。

ごめんね、早く治す

嬉しくて笑いながら咳き込むという更に苦しい状況に追い込まれつつも、
彼女のセリフに蔵馬はまぁいいか、というような気になって、
不機嫌もすっかり忘れてしまうのだった。

* * *

咳がまだ止まらないので自分を慰めてみました。
なんだかこの日記のカウンタがこの間一万だか二万だかを
数えていたのに今さっき35に戻っていてあれれという感じです。
まぁたまにそんなこともあります。

一応今夢書きも少しずつやっているのですけど、
事実上新年初夢は↑の文章になりました。
自分夢じゃない笑。
そして今書いている夢とやらがド失恋夢で(うあああ)
今どんでん返るために盛り上げているところです。
でも長くなりそうなのでこれはアップは遅そうです。

従姉妹たちの来訪があり、接待係は主に私だったため、
挨拶回りがまた遠のいていたりして(言い訳)。
もう新年じゃないよ…笑って許してください…
ねりちょぎ
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